憧れというか、なんというか。
「あー……、この人みたいな感性がほしいなぁ。この人みたいな視点がほしいな」と思う人がたまにいる。どうやったらこの人みたいな、なんか特別感があってキラキラしてて楽しそうな感性や視点がもてるんだろうと思うと、羨ましいような皮肉のような、なんとも言えない複雑な気持ちになるのだけど、まあ、これまでどうやって生きてきたかで変わるんだよな、人生。
なにせ私は人生のうちで、犬を飼ったことがない。
その憧れ? の人は犬を飼っているようで、犬の話題がよく出てくるんだけど、私は犬を飼ったことがない。というか動物の飼育経験はゼロだし、唯一生き物を飼った記憶と言えばザリガニぐらいなもの。だから、その人が書く犬の話を読むと「あー……、犬を飼うとこういう事を思うのかな」って薄ぼんやり思うのだけれど、私には思うぐらいで分からない。もうすぐ犬が死にそうだからと悲しい感情を綴るその人の文面を見て、「なんかすごい綺麗な文章を書く人だな」とは思っても、心の芯から犬に思いを馳せることができないのが、もうなにか根本的に違う気がする。
終始そんな感じで、ふと「まあ同じような感性なんてもてないよな。だって同じように生きてないんだし、そりゃ違う経験をして違うように感じて生きてるんだから、同じようにはなれんよな」と思う。なんというか、それが真理なのだと思う。